40代でも妊娠率はそれほど低くない。情報のトリックに惑わされないで!

「35歳を過ぎたら妊娠しにくい」という情報が呪縛のように憑りついて、不安になっている人は多いのではないでしょうか。でもそれは真実なのでしょうか。興味深い研究調査の記事があったのでご紹介します。

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35歳以上の妊娠率問題。私たちは必要以上に焦らされている?!

35歳以上で妊娠率がガクッと落ちる説」はもはや常識。ですが、それを疑問視してデータの取り上げ方による思い込みを発見し、真実を正しく解説する記事を見つけました。それは2023年8月に出された記事で、プレシデントオンラインに書かれています。

「35歳以上でも妊娠はそれほど難しくない」ということが事実であれば、私たちは今、世間によって必要以上に焦らされているということです。

この焦りのストレスは、女性たちの生活や人生を変えるほどの強いストレスとなっています。もし、憑りついた呪縛を取っ払えたなら、ストレスが減り、今よりも健やかな心で日常を送れるのではないでしょうか。とりわけ妊活にはストレスが良くないと言われているのは周知の事実です。

記事では、「35歳を過ぎたら妊娠しにくい」ということが知れ渡ったきっかけが述べられています。

婚活・妊活ブームのさなか、NHKのクローズアップ現代が、その風潮を煽るような番組を作りました。2016年10月26日放送の「“老化”を止めたい女性たち~広がる卵子凍結の衝撃~」という回がそれです。

いわく、40歳になったら高度医療を使っても、採取した卵子から体外受精で子どもを授かれる確率は8.8%しかない、というもの。いわゆる「早く嫁げ」「早くつくれ」論の極め付きといえたでしょう。

その反響は女性を“開明”させるというより、30歳を過ぎた女性への鞭打ちともいえるものでした。番組放映後、適齢期男児を持つ親御さんから、「30代の女性と結婚してはだめだ」「女として賞味期限切れだ」という心無い発言が相次いだと報道されています。

海老原 嗣生,PRESIDENT Online,2023.8.25

私は見ていませんが、そんな番組があったのですね。2016年のことです。

筆者の海老原さんは、この後こう続けています。

この「8.8%」という話が正しかったのなら、それでもまだ納得はできるのですが、データや結論までの構成には、多々疑問符がつく内容でした。

海老原 嗣生,PRESIDENT Online,2023.8.25

テレビが言うことや医者の言うことは鵜呑みにしてしまいがちですが、実際のところどうなのか。

では、結果的に「40歳になったら体外受精で子どもを授かれる確率は8.8%しかない」というのは、間違いなのでしょうか。本当はもっと高いのでしょうか。

40代の妊娠率、実際は?

間違いではありません。「40歳になったら体外受精で子どもを授かれる確率は8.8%しかない」というのは正しい情報です。

ただ、これを、「40歳になったら子どもを授かれる確率は8.8%しかない」と捉えるのは間違いです。8.8%という数字には、自然妊娠が含まれていないからです。

ん?それだけではピンと来ないですね。20代に比べて減っているのは間違いないのだから。

それはこういうことなんです。

世の中には不妊治療をせずに自然妊娠している40代の方が、不妊治療している40代よりも圧倒的に多い!だから、8.8%という「うわ、少ない…」という数字は、世の中の40代全員には当てはまらないのです。

筆者はこう解説しています。

40歳を過ぎると8.8%しか出産できないという数字ですが、これは、体外授精1回当たりの出産に至る確率です。

まず、世の中には、不妊治療などせず、自然妊娠している40代が多々いるということ。いや、不妊治療者よりも、自然妊娠のほうが圧倒的に多いのです。直近2020年、日本では年間4万8517人の人が40歳を超えて出産をしています。そのうち、不妊治療患者は1万3235人。残りの3万5282人は自然妊娠。つまり、7割以上が自然妊娠なのです。

海老原 嗣生,PRESIDENT Online,2023.8.25

さらに、体外受精においても8.8%しか子どもを産めないというわけではありません。なぜならば、こう指摘されています。

・8.8%というのは1回の治療で妊娠する確率に過ぎない。
・この治療成績には、30代の頃から不妊治療を続けている比較的症状が重い患者の割合が高くなっている。
・治療中に自然妊娠で妊娠して治療を終了させた「勝ち抜け組」が含まれていない。

なるほど。つまり、「40代は妊娠を望んでも8.8%しか妊娠できない」というのは、間違った捉え方だったのですね。前向きな言い方をすると、40代前半の女性の7割が不妊ではないのです。

受精・妊娠・出産確率の低下は、思っているほどではありません。30歳の出産可能性を100とした場合、40代前半なら70か、もしくはそれ以上はあるというのが、多くの先行研究の示唆するところです。

海老原 嗣生,PRESIDENT Online,2023.8.25

この事実を知って、少し焦燥がやわらぎました。もしかすると、不妊治療をしている人は、妊活を開始していない人よりも焦燥が強いために、余計に妊娠しづらいということもあるかもしれません。だから、自然妊娠する人は割と簡単に妊娠するし、一生懸命治療している人は成功しにくいし…という現実が出来上がっているのかもしれません。(これは完全な仮説です)

ただし、年齢とともに、受精・妊娠・出産の確率は下がり、障害の発生や不妊の比率が上がるのは、間違いのない事実であり、それを否定する研究はまずないだろうということだったので、妊娠は早いに越したことはないとありません。

しかし、世に出回っている情報がいたずらに焦燥感を煽っている現実があるということは、知っておくのが良さそうです。

筆者が記事の冒頭でこう述べています。「当たり前ですが、女性は、子どもを産むために生まれてくるわけではありません。女性は、結婚するため、キャリアを磨くために生まれて来るわけでもありません。結婚も出産もキャリアもみな、生きていく過程の一選択肢にすぎないはずです。」

人生の大半を、妊娠できていないことへのストレスにまみれて、一目を気にして生きていくのはやめたいですね。

これを読んだ読者のみなさんの心が少しでも楽になったらうれしいです。

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記事全文はこちらから読むことができます。ぜひ読んでみてください。

続編として、こちらの記事も読んでみてください。

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